震災復興研究
東日本大震災復興支援研究への取り組み
まず、東日本大震災により、被害を受けられた皆様に、心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
自治医科大学在籍時、私どもの研究室も、少なからず、震災の被害を受けました。しかし、それ以上に甚大な被害を受けた被災地の惨状を目の当たりにし、そして、その復興を支援す る本学医療スタッフの貢献を身近に感じつつ、私ども研究者が、震災からの復興にいかなる貢献ができるかを真摯に考えました。はたしてそれは、一般のボラン ティアとして瓦礫を撤去することなのか、医療スタッフのお手伝いをすることなのか、思いを巡らせつつ、やはり、餅屋は餅屋、研究者は研究を持って復興に貢 献するべきであると確信するにいたりました。
一方で、同じ思いを持つに至った「別の餅屋」がいらっしゃいました。私どもが日頃より調査でお世話になっている株式会社クロス・マーケティング社さんも、インターネット調査をもって復興支援をしたいとお考えになっていることを知り、ならば、手を取り合い、力を合わせるべきという結論に至りました。
このような次第で、東日本大震災に対する復興を支援するために、私どもとクロス・マーケティング社さんは、共同研究を行なうことにいたしました。
しかしながら、私どもが自ら被災地に出向いて調査研究を行うという道は選びませんでした。たしかに、そのような研究は重要です。しかし、その重要さ故に、 誰かが必ず行うことになるでしょう。私どもが新たにその中に加わることによって、被災者の方々の心労を増やすことは、私どもの本望ではございません。
このような思いから、私どもとクロス・マーケティング社さんは、独自の研究貢献の道を模索することにいたしました。
東日本大震災は、地震・津波・原発事故を通して、広大な地域に被害をもたらしました。このような大きな災害や事故では、直接大きな影響を受けた地域はもと より、比較的影響の少なかった地域や、直接影響は受けなかった地域においても、生活の質や心の健康に影響が出ている可能性があります。
そこで、今回の一連の災害で何らかの影響を受けた方の心の状態と生活の質を調べることにより、心の健康を保ち、生活の質を高めるための知見をえることを目 的として、インターネット調査研究をすることにいたしました。このために、震災直後から入念な準備を進め、本学倫理委員会の承認を得て、災害心理調査開始 の目安とされる3ヶ月の安静期間を経て、2011年6月中旬より、本調査を実施するにいたりました。
私どものように軽度の被災者も含め、少なくともインターネット調査に答えられる程度にご回復なされた方々に、調査へのご参加を以てご協力いただければ幸甚と思います。また、調査にご参加なされない方には、私どもとクロス・マーケティング社さんの試みを、精神的にご支援いただければたいへんありがたく思います。
本インターネットの調査結果は、貴重な研究資料として、学術論文、学会発表に活用させていただくとともに、プレスリリース等を通して、皆様の役に立つ学術情報として広く認知を心がける予定です。
この調査研究によって、傷ついた日本を少しでも元気にするお手伝いをさせていただきことが、私どものミッションと感じております。このような趣旨をご理解いただき、皆様のご支援、ご協力を賜りたくお願い申し上げます。
自治医科大学医学部先端医療技術開発センター脳機能研究部門
准教授 檀一平太 (現 中央大学理工学部教授)
ポストドクター 久徳康志 (現 中央大学研究開発機構准教授)
センター長・教授 渡辺英寿
これまでに得られた成果
東日本大震災被災者の心理的適応過程の構造方程式モデリングがPLoS Oneに掲載されました。これは、東日本大震災に関する心理学・精神医学的研究としては、初の英語学術論文です。株式会社クロス/マーケティングとの共同研究です。プレスリリース資料、簡易版と詳細版をご覧ください。