サイコメトリクスは他の手法と何がちがうのか?
サイコメトリクスでは、ネット調査であれ、対面式の調査であれ、質問紙を使います。「それではアンケート調査と一緒じゃない?」と思う方も多いでしょう。実際に、日本でサイコメトリクスがあまり浸透しない理由の一つにはこの偏見が挙げられると思います。しかし、実際には、両者はかなり内容が異なります。まず、通常のアンケート調査は、通常、1項目からなる直接的な質問によって、消費者の心理傾向を粗く計測します。メリットは、スピードですが、計測に用いられる心の物差しが適切であるか否かの検証がなされないため、精度が悪い可能性があります。また、心理特性の関係性を把握できるような 「深い情報」は得られません。
一方、サイコメトリクスは、なるべく直接的な質問は避けつつ、間接的な質問から、計測対象となる心理特性を浮き彫りにしていきます。ただし、質問紙を読ん だだけでは、通常、なにを聞きたいのか、質問者の意図は分かりにくくなっています。得られた結果に対しては、計測精度に対する検証を必ず行ないます。そし て、最終的なアウトプットとして、可視化された認知モデルが得られます。これは、消費者の認知特性を表す「深い情報」です。
それでは、単に「深い情報」が得られればよいかというと、必ずしもそうとは限りません。たとえば、消費者の心理特性を見いだす手法として、グループインタビューやエスノグラフィが存在します。これらは、消費者が自分でも気付かない潜在的な思考を分析する手法ですが、質的な解析に留まっています。そのため、分析者の力量や思考のクセによって、解釈が大いに異なるという危険をはらんでいます。端的には、職人芸です。一方、サイコメトリクスは消費者の潜在的な思考の描出を目的とはしていますが、量的な研究であり、研究者が変わったとしても分析方法が同じであれば、類似の結果が出てきます。すなわち、得られる結果に恣意性が少ないのが特徴です。このため、技術の共有や移転が簡単に行えますし、過去の研究を参考にして、その上に新しい研究を構築していくといったこともできるわけです。
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2013/06/01