DIY経験が商品価値を高める「IKEA効果」の可視化

fNIRS (JP) プレスリリース 掲載情報 研究

DIY(Do It Yourself)経験が商品価値を高める「IKEA効果」に関する脳活動をfNIRSで可視化することに成功しました。IKEA効果とは、ばらばらの製品を消費者自身の手で組み立てることによって支払い最大価格(WTP)が高く評価される認知バイアスで、左背外側前頭前野/前頭極が関与することが分かりました。DIYのような体験をもとにした「コト消費」の価値判断を脳機能計測によって定量化したことは、fNIRSを活用した「コト消費」のニューロマーケティングの発展に寄与する成果です。
筆頭著者は、2023年修士卒の大石拓樹さんです。この成果は、神経人間工学の国際誌、Frontiers in Neuroergonomicsに掲載されました。

プレスリリースはこちらでご覧いただけます。

中央大学(檀)らの共同研究グループは、光を用いた非侵襲の脳機能イメージング法であるfNIRS(functional near-infrared spectroscopy: 機能的近赤外分光分析法)を利用して、「コト消費」(体験消費)における価値判断時の脳機能を可視化し、効果を定量化することに成功しました。
近年、モノを対象とした購入ではなく、体験等を対象とした「コト消費」と呼ばれる消費形態が注目を集めています。「コト消費」は認知バイアスと密接な関係があり、今回の研究ではその中でも「IKEA効果」に焦点を当てました。IKEA効果とは、ばらばらの製品を消費者自身の手で組み立てることによって支払い最大価格(WTP)が高く評価される認知バイアスのことで、「コト消費」と深く関連していることが分かっています。
今回我々は、IKEA効果が生じることを確認した上で、IKEA効果の認知メカニズムを脳機能の観点から検討しました。具体的には、商品を組み立てる体験(DIY経験)をした「DIY条件」のWTPは、商品を組み立てない「Non-DIY条件」よりも高いという仮説を立てました。そして、学生30名にDIY経験有・無の条件を作り、それぞれの製品写真を見せてWTPの評価を行ってもらいました。同時に、評価中の脳機能を、WTPの評価や愛着、記憶の呼び出しに関連する前頭前野を中心に計測しました。その結果、DIY条件の方がNon-DIY条件に比べて左背外側前頭前野/前頭極の活動が優位に大きいことが分かりました。この脳領域は、強い印象を伴う出来事を呼び起こす際に活動することから、IKEA効果のメカニズムに関連する脳領域として妥当なものです。これにより、今回観察されたIKEA効果の脳内表象ではDIY経験によって製品に対する強い印象が生じ、WTP計測時に製品写真を見ることでDIYの短期的な記憶が想起されたことを反映したと推測しました。
今回、DIYのような体験をもとにした「コト消費」の価値判断を脳機能計測によって定量化したことは、fNIRSを活用した「コト消費」のニューロマーケティングの発展に寄与すると期待されます。

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