サイコメトリクスは何をするのか?

サイコメトリクス

サイコメトリクスは、「心の物差し」を作り、「心を測る」技術です。この心の物差しとなるのが心理尺度です。心理尺度は、複数の質問項目からなる質問群によって、ある心理特性を計る方法です。たとえば、鬱病の患者さんに「あなたは鬱ですか?」と聞いても、「中等度の鬱です」という答が返ってくることはまずないでしょうが、巧妙に組合わされた質問によって、鬱度を判定することは可能です。たとえば、「悲しい気持ち」、「睡眠異常」、「食欲異常」、「疲れやすさ」といった項目に対する質問の答から、総合的な鬱度を判定するわけです。
サイコメトリクスの特徴

ここで重要なのは、心の物差しが「ちゃんとしているかどうか」です。もし、計測の対象が体重であれば、体重計に乗るだけでかなり正確な計測が可能です。しかし、人の心理特性は同じ個人によっても計測毎に微妙に異なりますし、人が違えば大きく異なることが予想されます。このようなあいまいな対象を計測するためには、物差しの精度にも独自の手法が必要となります。まず、物差しが信頼性できるものかどうか、計測に使う尺度で安定した測定ができているかどうかを検証します。また、計測に使う尺度が計測したいものを計れているかどうか、他の尺度との比較を通して、検証します。

サイコメトリクスでは、このようにして確立した複数の心理尺度を組み合わせて、その関係性を検討します。その際には、必ずしも仮説に依存しない探索的な手法も用いますし、あるいは、先行研究や経験に基づいた仮説を検証する場合もあります。その結果を基に、消費者の認知構造の可視化と定量化を行ないます。

たとえば、例として、ブランドの強弱を構造方程式モデル(SEM)によって可視化するという場合を見てみましょう。
ブランドモデル例
これは、文献 (Engel et al., 1995; Heskett et al., 1997; Reichheld et al. 1990)を参考にして構築した架空のモデルです。このモデルでは、弱いブランドでは、ブランドの認知度が低く、また、消費者にも十分なブランドロイヤリティが形成されていない状況にありますが、強いブランドでは、それらがうまく機能しているという状態を可視化しています。実際に、これらのモデルを仮説として検証を行ない、各々の潜在変数(ブランド評価や満足度)の関係性を数値として表すことも可能です。ただし、これらはあくまでも例にすぎません。これまで、我々は、共同研究を通していくつかの有用なモデルを構築するに至りましたが、そのうち公開の可能なものは論文として公開を準備しています。しかし、非公開として企業のマーケティング戦略に活用されているモデルも生まれています。

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